川田(水樹)さんと初デート

7月18日(月)
福岡でも梅雨明けが発表され、強い日差しが照り付ける。
3連休最終日、いつもであれば明日からの仕事に憂鬱感を抱えながら最後の午後をゆっくりと過ごしている。
しかし、この日の僕は違っていた。
14時過ぎに家を出て、電車で川田さんとの待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所の駅前には10分前に到着した。
非モテ感を出さないためにも、ギリギリについた風にしよう。
女性と2人切で会うのは、3か月半ぶりで緊張を解きほぐすためにも、トイレに入った。
個室で心を落ち着け、恋愛工学の最後の復習をする。
今日はとにかくCフェーズを進めなければならない。
第一声は「あっついな?」と決めている。
ほぼ間違いなく「そうだね」と答えるだろう。
イエスセットを使って落ち着くのだ。
カフェに入ったら、ミラーリングで同じタイミングで飲み物を飲む。
共通の趣味は多いので、川田さんに気持ちよく話してもらい、Cフェーズを完成させる。
これで後日、全く問題なく、ディナーの約束は可能だろう。
机上では、完璧なプランだった。
トイレから出て、僕は待ち合わせ場所に向かった。
まだ3分ほど時間があったので、少し離れたベンチに座った。
すると、川田さんからLINEが入る。
川田さん) 今着いた。白いスカート。
白いスカートはくブスはいない。
僕のドキドキは最高潮に達し、待ち合わせ場所に向かう。
遠目に見ると、後ろ姿の白いスカートの女性が見える。
近くに行って声を掛けた。
金村) 川田さん?
川田さん) 金村さん?
紺のYシャツに白のロングスカート。
足元は黒のパンプス。
籠のバックを持っている。
身長は160センチ中盤はあろうか。
結構痩せている。
顔はというと、写真よりもやや可愛いのではないか。
川田さんをツーランクを落としたと思っていたが、声優の水樹奈々に似ている。
ど真ん中と言うわけではないが、どう見てもストライクゾーン。
スレンダーまあまあ美女ってかんじか。
僕のテンションと下半身が、もう1つギアアップしたのは、言うまでもない。
水樹さん) じゃあこっち。
家が近い水樹さんが決めてくれた店へ僕たちは歩き始める。
金村) 今日はあっついな~
水樹さん) そうだね。
3日前から決めておいたイエスセットが炸裂する。
これで、落ち着いてゲームを進められるはずだ。
当たり障りのない会話を展開しながら、3分ほどで店に到着した。
オシャレなかんじのカフェだ。
やっぱり可愛い子は、こういう店を知っているんだな・・・
入店して、水樹さんはカフェラテを注文。
僕も同じ物を頼んだ。
500円もする・・・
合計1,000円は僕が出しておいた。
席について水樹さんから話題を提供してくれた。
水樹さん) 別府行ってたんだよね?
金村) そうそう、大分に友達がおって。
別府初めて行ったけど、温泉気持ちよかったな。
水樹さん) よかったね~。
あれ??
会話が終わってしまった。
1人旅行なのに、友達とって嘘までついたのに…
水樹さんも結構旅行好きらしいので、別府の思い出とか行った旅行地とかで、話が広がるはずだった。
しかし、思いの外広がらない。
水樹さんも緊張しているのだろうか・・・
予想外の展開に僕は完全にテンパってしまった。
そして、ここから歯車が狂い始める。
僕たちは多くの趣味を共有している。
読書、野球観戦、料理。
これらの話題を振っていけば、水樹さんも話しやすいだろう。
会話も盛り上がるはずだ。
まず読書の話を振ってみた。
金村) そう言えば、読書好きやんな?
どんな本を読むの?
水樹さん) 何でも読むよ。
小説とか、自己啓発本を読んでる。
金村) 自己啓発本。
僕もたまに読むよ。なんかお薦めある?
水樹さん) ・・・・う~ん、考えとくよ。
またもや、終わってしまった。
その後、野球の話や、料理の話もしてみた。
多少の広がりは見せたものの、いまいち盛り上がりにかける。
あれ?なんかおかしいぞ・・・
僕はこの1年間で、4人の女性に会った。
水樹さんは5番目だ。
もちろん、何か共通の話題があったからこそ仲良くなったのだが、水樹さんほど多くの趣味を共有している人はいなかった。
よって、今回はそれほど苦労しないと思い込んでいた。
これまでの相手が、サッカーで言うと韓国やオーストラリア戦だとしたら、今回はシンガポールぐらい。
まあ大丈夫だろうと。
しかし、波に乗れないまま時間だけが過ぎていく。
こんなはずじゃなかったのに・・・
焦りばかりが募り、本来のペースを崩していく。
盛り上がる話題を探るために、絶対にやってはいけないつまらない質問を繰り返してしまう。
僕が可愛いと思い、テンションが上がった女性とは結構盛り上がることができた。
盛り上がらなかった飲食女子や学生OLは、僕のテンションが上がらなかっただけだ。
しかし、今回はテンションが上がっているのに、盛り上がらない・・・
何が悪いんだ?
昼だから?
女性から遠ざかっていたから?
お互いの相性?
はっきりとは分からない。
ただ1つだけはっきりと分かっていることは、明らかに流れが悪いということだ。
カフェに入って1時間程たった16時ごろ。
少し沈黙が続いた時。
水樹さん) そろそろ出よっか?
早くないか?退屈なのか?
僕たちは店を出ると、駅のほうに歩き始めた。
沈黙が続く。
次のディナーに誘いたいが、そんな雰囲気でもない。
駅の改札に着き、僕は電車で、家の近い水樹さんは徒歩で帰ることになる。
水樹さん) じゃあね。
金村) ありがとう、楽しかったよ。
意気消沈の僕には、その言葉を言うのが精一杯だった。
水樹さんは、笑顔で手を振っている。
可愛い。また会いたい。
でもこの笑顔はもう見られないだろう。
このバイバイは永遠のバイバイにしか見えなかった。
女性はいつだって笑顔で、しかし残酷に僕の前から去っていく。
今回もそうなんだろうか・・・
恋愛工学に出会い、成果こそ得られていないものの着実に成長してきた。
5番さんとは2回だけだったけど、金融OLとは5回も食事して告白までした。
この進化している実感こそが、僕がフラれても次に頑張れるエネルギーになっていた。
しかし、今回は退化することになりそうだ。
また会いたいと思っても、1回でダメになっていまう。
やっぱり僕はブサイク、コミュ障、ダメ人間で、恋愛など到底無理なのだろうか?
もう下手な期待は辞めて、セミリタイアに専念すべきなんだろうか?
僕は、圧倒的な絶望感のまま帰路に就いた。
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