『人生100年時代の年金戦略』(田村 正之 著)の読書感想文

先日の「ねんきんネットを使ってみた」に続いて、年金関連の本を読んでみました。
相互リンクさせていただき、10月の旅行でお会いした虫取り小僧さんのブログでも紹介されていた本です。
全体的に読みやすい、分かりやすい、何よりも加入者の立場的にどうすべきなのか?を中心に書かれている良書でした。
読む中で、1つ誤解していたことがあったので、その点を共有したいと思います。
所得代替率と年金額の関係についてです。
従前の僕のイメージは以下の通り。
役所が将来の年金を試算する時に、所得代替率という言葉が出てきて、それが徐々に下がっていくことが示されている。
50%切りが云々とか。
つまり今後年金が下がるのは、役所も認めている事実なんだと。
しかし、これが大きな誤解でした。
年金の実質額は所得代替率の低下ほど減らないと述べられています。
本では、想定された8つのケースの内、下から2番目の例を挙げています。
ケースG
物価上昇率 0.9%
名目賃金上昇率 1.9%
実質経済上昇率 -0.2%
2014年度
①現役男子の手取り収入 34.8万円
②モデル世帯の年金額 21.8万円
③所得代替率(②÷①) 62.7%
2058年度
①現役男子の手取り収入 51.5万円
②モデル世帯の年金額 21.6万円
③所得代替率(②÷①) 42%
所得代替率が、62.7%から42%へ3割以上減ることで、世の中一般的に年金額そのものが減少すると思われていますが、大きな誤解です。
下から2番目の厳し目のケースでも、年金額自体は21.8万円→21.6万円と微減に留まっています。
本より抜粋した理由は、以下の通り。
・現役世代の減少や受給者の平均寿命の伸びを反映させて、毎年の受給額を自動的に調整する「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されている
・そのため賃金・物価に対して給付額の伸びが低い状況が続き、現役世代の手取りに対する受給額(所得代替率)は下がっていく
・しかし名目賃金率が伸びていく前提なので、分母が大きく増えていく結果、所得代替率は下がるが、年金自体は微減でしかない予想になっている
・ここでの受給額は、物価上昇分を割り引いて現在の価格に直した実質額である
もちろんあくまでも想定であり、年金額がほぼ減らないと保証しているわけではありません。
しかし、所得代替率の減少=年金額の減少と言う、従前の僕の理解は明らかに誤っていました。
年金に関しては「少子高齢化で制度が持つはずがない」とか「もらえればラッキーぐらいに考えておいてちょうどいい」等、かなり厳し目に想定している方もおられるかもしれません。
基本的に、将来の安心のために厳し目に想定することが大事である点には同意します。
しかしあまりにも厳しい想定は、セミリタイアの時期を遅らせたり、過度に支出を抑制する等、決して自分のためになりません。
特に年金に関しては、世間的に槍玉に挙げられ、誤ったイメージを持ちやすいと思います。
信頼できる情報リソースから、的確な情報を得て、それを参考に想定することが大事であると改めて思いました。
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