内部告発について

ビッグモーターの保険金不正請求が大問題になっていますが、発覚のきっかけは内部告発です。
勉強している労働判例の中にも内部告発のテーマがあって、いい機会なので、まとめてみました。
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用語の定義ですが、内部告発とは不正を許可なく外部に知らせること。
社内の受付部署等に知らせることは、内部通報と言うらしいのですが、まとめて内部告発ってことにします。
大前提として、企業の内部情報を外部に漏らしてはなりません。
しかし、内部告発で不正を是正する必要性は高く、公益通報者保護法等により保護される場合もあります。
保護を受けるか否かの判断として、①真実であるか、真実であると信じるに足りる相当な理由があるか(真実・真実相当性) ②公益に資するか(公益性) ③手段や態様に相当性があるか(手段・態様の相当性)が問題となります。
①真実・真実相当性
真実であればいいのですが問題は真実相当性で、どのレベルまでの相当性があればいいのか?って問題。
これは告発先によって異なってきます。
企業内部→行政機関→マスコミの順に、より高度な相当性が求められます。
特にマスコミへの告発については、相当性に加えて、証拠隠滅の恐れがあるとか生命身体への急迫した危険がある等まで要求されます。
②公益性
公益性は幅広く解されていますが、組織に損害を与え、私利を図るもの、私怨に基づくものは否定されます。
例えば、対立派閥の失脚を狙ったものだと認められません。
③手段・態様の相当性
主な論点は、ちゃんと段階を踏んでいるか?って点。
企業内部→行政機関→マスコミの順で、ダメだった場合に次の所へ告発するのが一般的なやり方。
社内への通報をせずに、いきなり外部に告発した場合は、手段・態様の相当性が原則として否定される学説もあります。
以上より、内部告発はまず社内の受付部署へが基本だと分かります。
この段階だと、求められる真実相当性は事実であると思料する場合に留まるので、間違っていてもお咎めなしの可能性も高い。
事実の場合、たまに隠蔽したことがニュースになりますが、大抵の場合は適切に対応されるでしょう。
社会を通さずにいきなりマスコミ等に告発した場合、保護されない可能性もあるし、特に間違っていた場合は損害賠償にもなり得ます。
ちなみに、判例で出てきたトナミ運輸事件。
闇カルテルを新聞社に内部告発した従業員が、左遷人事を受けた事案です。
闇カルテルは事実であり、告発することに公益性もあり。
副社長や営業所長に訴えたものの説明が不足気味で、十分な内部努力がないままにマスコミに告発した手段・態様面がやや問題にはなりました。
しかし、管理職でもなく発言権に乏しく、内部努力をしていても是正される可能性は低かったとして、内部告発は正当とされました。
よって、法的保護に値するものとして、左遷人事は違法との結論になりました。
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